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「ああ、そうだ。これ、お土産」
「え?何の?」
目の前に差し出された紙袋と美緒の顔を交互に見た。
「佐々木さんから。預かってたの」
「……!」
受け取った紙袋を慌てて開く。
中にはゲーセンで取ったと思わしき手のひらサイズのキノコのぬいぐるみが入っていた。
「貧乏学生のお土産って感じでウケるよねー」
美緒も同じぬいぐるみを鞄から出して見せてくるから、それを奪い取って柔らかい布の身体をぐにぐにと容赦なく揉んだ。
うん、アレは入ってないらしい。
「ちょっと何すんの!」
「…盗聴器チェック?」
「はぁっ!?」
美緒は私の手からぬいぐるみを奪い返すと大切そうに抱えながら私を睨んだ。
そういえば、私も航一さんからお土産を預かっていたんだ。
家にあるはずだから帰りに寄らないと。
…その前に。
ぬいぐるみに話し掛ける美緒を見て眉間に力が入る。
「…何でそんなに大事にしてるの」
まさか、本当に心を奪われちゃったんじゃなかろうか。
そう密かに心配する私に、美緒はちょっとだけ眉を下げた。
「…だってさー、なんかもう会えない気がするから」
「……」
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