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「そーよ。…待っててね」
「うん」
小さな声で笑い合うと、穏やかな空気に涙が出そうになった。
いつか、美緒に全部を話せる日が来るといいな。
直純さんも冬馬くんもなっちゃんも、皆が外の世界に出て来られる日が来るといいな。
美緒の柔らかな小指の感触が、私にそんな夢を見させてくれる。
「あ、でも」
「え?」
「急展開や棚ぼたは別ね。もしも誰かに告られちゃったりしたら速やかに報告すること」
「…えっ」
「え?」
「……」
「………」
なるべく自然に美緒から目を逸らし、絡まった小指をそっと抜こうとした。
…その時だ。
「いたたたたたた!!」
美緒の小指が瞬時にきつく締まり、私の小指を鬱血させる。
柔らかなはずの細い指は、今はまるで孫悟空の頭の輪っかのようだ。
「いたいっ!指っ!む、紫色になってる…!」
「あんた…!誰かに告られたね…!?白状しな!」
「いだたたた!!!い、痛いってば…!折れる!死ぬ!」
「言うまで離さないよ!相手は誰っ!」
その時の美緒は、わらしなんかよりずっと恐ろしく見えた。
それは私だけじゃないはず。
トモユキも教室に入ってきた先生も、怯えた目で美緒を見ていた。
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