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尋問は昼休みにもつれ込み、美緒の剣幕に逃げられなくなった私は「相手の素姓は伏せる」という条件の下、ついに口を割る。
夏生を良く知る美緒だから、少しの手掛かりを与えてしまえば命取りになると思い言葉には気を遣い、一緒に仕事をしている人が結構前から私に好意を寄せてくれていたらしいと伝えた。
「ええーっ!何ソレ…ときめく…!それで!?波瑠はその人のことどう思ってんの!?」
「ど、どうって…」
どう、と聞かれて夏生の事を思い浮かべる。
何となく顔が熱を持った気がした。
「…ちょっとガサツだけど、頼りにしてるよ。多分、これからもずっと近くにいると思うし…。で、でも今までそんな風に考えたことなかったから、どうなんだと言われても…」
「まぁ、遠山さんだしね」
「……」
全然違うけど。
眉を寄せると美緒が「えっ、違うの?」と意外そうな顔をした。
他に心当たりが無いのなら黙ってればいいのに。
「返事は?」
「え?」
「え、じゃないよ。まさか言われっぱなしで放置するつもり?」
「……だってその人、今まで通りで良いって…」
「あんたやっぱり馬鹿ね。そんな残酷なこと、本気で望むわけ無いじゃん」
美緒の冷たい目と辛辣な言葉が私の胸にグサリとダメージを与える。
夏生は笑っていたけど、どんな気持ちでその言葉を口にしたんだろう。
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