ゆめ、うつついろ

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  「答え、って…?」 「あんた、もうその人の事好きでしょ」 「はっ…!?」 目が、顔から飛び出したかと思った。 「いや、まだ気になるってレベルか。でも時間の問題だね!あーあ、波瑠に先を越されちゃうのかぁ。なんか複雑」 「ち、ちょっと」 「そうだ、波瑠が男心を勉強出来るように雑誌貸してあげるよ!ソレ系の特集が何冊かあった気がするし」 「美緒、」 「仲が進んだらちゃんと事細かに報告してね!頑張れ、波瑠!」 「………」 美緒を冷めた目で見る振りをしながら、内心は平静を装うのに必死だった。 美緒に言われた言葉のせいで、変に胸が騒ぐ。 真っ直ぐに見つめてくる夏生の大人びた目。 月夜に抱き合った腕の強さや触れる体温。 『好きだよ』の言葉。 授業中もそればかりが頭を占めて、何度も教科書で顔を覆った。 美緒のせいで、今夜もまともに夏生の顔を見られそうにない。 教科書の隙間から横目で美緒を睨んだ。 美緒は既婚者の多い『鳳来』の誰かが相手だと思っているんだろう。 表紙に『年の差彼氏特集』とか『秘密の恋を楽しむ方法』とか、何とも怪しげな言葉が並んでいる雑誌を持って来たのはその数日後の話だ。  
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