ゆめ、うつついろ

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  『どうしても白がいいんだけどなぁ…』 そう呟きながらクレーンゲームと奮闘し、茶色の熊を三つも取っていた航一さんの懐には、既に用意された盗聴器入りの白の熊があったんだろう。 今日美緒に渡されたゲームセンターで取ったと思われるキノコのぬいぐるみを鞄から取り出して仏壇に乗せ、変わりに茶色の熊を目の高さまで持ち上げてジッと見た。 白い熊の背中から出て来た小さな盗聴器が、まだ目に焼き付いている。 「…航一さん?」 これにはきっと、盗聴器なんか入っていない。 わかっているのにそう呼び掛けてしまうのは、やっぱり寂しいからだろう。 航一さんがやったように自分の頬を軽く摘んでみた。 …声が届けばいいのにな。 そう思いながら茶色の熊を自分の携帯に付けて、鞄に大切に仕舞った。 今度は頭でっかちの香水の瓶を手に取り目を見張る。 …うわ、シャネルって書いてある。 航一さんが私物を置いていったんだろうか。 だって、中身がなんとなく少ない気がする。 蓋を外して自分に噴射口を向けたのは、ただの興味本位だった。 「…わっ」 細かく舞った香りの霧が仏間に広がる。 その攻撃的な甘い香りにむせそうになった。  
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