ゆめ、うつついろ

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  「この金木犀、波瑠の家の裏庭の木?」 「あ…う、うん、そう」 昔の話だから気にしないでね、なんてヘラヘラ笑いながらこの場を何とかしようと思ったけど、冬馬くんの方から微妙になりかけた空気を和らげてくれた。 こういう気遣い出来るところ、やっぱり素敵。 夏生なんかと全然違う。 なかなか熱の引かない顔で冬馬くんと顔を見合わせて笑い合っていると、何の前触れもなく部屋の扉が開かれた。 固まったまま、ゆっくりと喉を鳴らす。 ……夏生が帰ってきた。 「おかえり」 冬馬くんが私の肩越しに声を掛けて、私の緊張はいよいよピークに達した。 普通に接しなきゃ、とは思っても昼間の美緒の「二択」発言が私を動けなくさせる。 夏生がいつも座る場所を横目で見た。 私の隣。 いつもみたいに、今から座るんだろうか。 なら先に挨拶を交わした方が幾らか気が楽かもしれない。 それ以前に振り向いて顔を見なきゃ、あまりにも不自然だ。 「お、お疲れー」 「お疲れ」 よし、第一関門は突破した。 この後はいつも通りコーヒーを勧めて、… 「…何の匂い?」 夏生はいつまでも立ったままで、眉間に皺を作ってこちらを見ている。  
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