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なにその怖い顔。
私、何かした?
救いを求めるように冬馬くんを見ると、冬馬くんが笑いながら説明してくれた。
「金木犀だよ。ほら、波瑠の家の裏庭にあっただろう?わざわざ持ってきてくれたんだ」
「違う」
「えっ」
「お前、香水付けてる?」
「え…」
目が泳いでしまう私とは対照的に、夏生は私をガン見する。
「香水…。付けてるっていうか…、う、うん、ちょっとだけ…」
金木犀に紛れて自分では気付かなかったけど、あんな少量だけなのにまだ香りが残っているらしい。
夏生の顔がより険しくなる。
「ガキのくせに、柄じゃないもん付けんな」
「は…?」
「あと、そのポケットからはみ出したやつ」
戸惑いながら自分のパンツのポケットを見ると、携帯に付けられた茶色の熊がこちらを向いていた。
「わらしと取引したやつと同じ物だな。そんなの昨日は付けてなかっただろ。それ、どうした」
「……えーと」
「あいつに貰ったやつか。何でそんなもん後生大事に付けてんだ。また盗聴器でも仕込まれてんじゃねえの」
「夏生。いちいち細かいよ」
何も言えなくなった私に、冬馬くんが呆れたような声で助け舟を出してくれた。
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