ゆめ、うつついろ

15/41
前へ
/1229ページ
次へ
  なにその怖い顔。 私、何かした? 救いを求めるように冬馬くんを見ると、冬馬くんが笑いながら説明してくれた。 「金木犀だよ。ほら、波瑠の家の裏庭にあっただろう?わざわざ持ってきてくれたんだ」 「違う」 「えっ」 「お前、香水付けてる?」 「え…」 目が泳いでしまう私とは対照的に、夏生は私をガン見する。 「香水…。付けてるっていうか…、う、うん、ちょっとだけ…」 金木犀に紛れて自分では気付かなかったけど、あんな少量だけなのにまだ香りが残っているらしい。 夏生の顔がより険しくなる。 「ガキのくせに、柄じゃないもん付けんな」 「は…?」 「あと、そのポケットからはみ出したやつ」 戸惑いながら自分のパンツのポケットを見ると、携帯に付けられた茶色の熊がこちらを向いていた。 「わらしと取引したやつと同じ物だな。そんなの昨日は付けてなかっただろ。それ、どうした」 「……えーと」 「あいつに貰ったやつか。何でそんなもん後生大事に付けてんだ。また盗聴器でも仕込まれてんじゃねえの」 「夏生。いちいち細かいよ」 何も言えなくなった私に、冬馬くんが呆れたような声で助け舟を出してくれた。  
/1229ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1543人が本棚に入れています
本棚に追加