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驚いたように目を瞬いた冬馬くんが、突然吹き出した。
「悪戯ばかりして先生に怒られていたあの子が、もうそんな大人びた事を言うのか。美緒もしばらく見ないうちに大きくなったね」
美緒が聞いたら怒りそうな事を言いながら、ゆっくりと頬杖をつく。
「でも、的を射てる」
「……」
「どうする?」
「………」
…どうする、なんて。
夏生の背中を思い出すように、もう一度扉を見つめた。
「…好きとか、良くわからないけど」
「うん」
「…ああやって、奥の部屋に入っちゃうのを見るのは…寂しいと思う」
冬馬くんが相槌を打ちながら笑っているけど、そちらを見ることは出来ない。
これから顔が赤くなることを、身体が予測しているようだ。
「…でも、なっちゃんにああやって嫉妬とかされるのは………嬉しいと思う…」
気持ちを言葉にした恥ずかしさからか熱を冷ます為か、僅かに視界が涙で滲む。
他にも言いたいことは沢山あった。
冷たく見えて、温かいとか。
乱暴に見えて、優しいとか。
本当は鼻タレなんかじゃないとか。
航一さんから守ってくれた時なんか、凄くカッコ良く見えたとか。
…そうか。
私は、夏生が好きらしい。
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