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認めてしまえば早かった。
宙ぶらりんでざわついていた心に「好き」という言葉がするりと入り込み、居場所を見つけたように静かに広がっていく。
ただ、胸の奥と顔だけがじんわりと熱くなっていった。
突然頭に手を乗せられた感覚に、びくりと過剰に身体が跳ねる。
顔をゆっくり動かすと優しく注がれる視線と絡み合った。
微笑む冬馬くんは、すっかりお兄ちゃんの顔をしている。
全てを悟っているようなその顔に身体の力が抜けていった。
「…な、なっちゃんに、言わないでね…」
「うん。波瑠の口から言ってあげた方が喜ぶからね」
「言っ……」
「言わないの?」
「…………」
…言ってしまったら確実にカレカノってことになってしまう。
私には、まだそんな覚悟は…
「気持ちの整理がついたら言ってあげてね」
にこりと細められた爽やかな目。
だけど、私の思考なんて手に取るようにわかるとでも言いたげな言葉に、私の顔が引きつった。
夏生がただの学校の先輩だったら、勢いだけで想いを伝えられたかもしれない。
せめて、こんなに存在が近くなかったら。
意気地無しの私の頭の中は、そんな言い訳ばかりで一杯になっていた。
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