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夜、お風呂を出てから薄暗くなった廊下を一人で歩いている時だった。
「捕まえたっ」
「ぎゃあっ……!…むぐぅ!」
角から突然伸びてきた腕に羽交い締めにされて悲鳴を上げかけ、口も塞がれる。
犯人は長い髪を下ろした柳さんと萩さんだった。
「んむっ…!…ちょ、ちょっと…!」
「しーっ」
「今から寮へ連行するわよ」
「えっ…!?」
平日なんですけど。
もうすぐ日が変わるんですけど。
心の中でそう訴えても二人には届く事無く、私は引きずられるように女郎さん達の寮へと連れて行かれた。
「…ほんとに連れて来ちゃったの?」
部屋には私の両腕にしがみつく二人を呆れ顔で見下ろす菊さんと、後半の面々。
その目が私を捕らえると、瞬時にニヤリと悪い顔になる。
嫌な予感に背を仰け反らせた。
「来ちゃったものはしょうがないわね。さ、御世話様との事を洗いざらい話してもらうわよ」
「えっ…!な、何のことですか?」
必死でとぼけてみると、菊さんは首を傾げてニコリと笑う。
…もう逃げられないと思った。
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