1543人が本棚に入れています
本棚に追加
…伝えたいかどうかと言われれば、別に伝えたくない。
だって、今までの関係が崩れてなくなりそうだし。
下を向く私の顔を覗き込んだ菊さんが小さく息を吐いた。
「まあ、いいんじゃない?伝えるって事はね、相手への想いが溢れて抑えられなくなった時だから。いつかそんな日が来るといいね」
「…そうなんですか?」
…溢れて、どうしようもなくなって言葉になるのか。
頭の中で復唱すると、ぞわりとした熱が鳩尾辺りに溜まってきた。
「…な、なっちゃんも…そうなったから言ったんだと思いますか?」
「当たり前でしょ」
「い゛っ……!」
強烈なデコピンを受ける。
細腕なのに、相変わらずなんて破壊力だ。
おでこを押さえて唸る私の頭を、紅葉さんが優しく撫でてくれる。
「私達からすれば、やっと言ったかって感じだけどね」
「え…」
「御世話様、凄くわかりやすいから。座敷童様だって知ってらっしゃるわよ」
「……」
…表情を隠す事が得意な夏生がわかりやすい?
眉間に皺を寄せていると、横から身体を割り込ませてきた柳さんが楽しそうに口を挟む。
「今日の座敷童様とのやり取りなんか、見ていて吹き出しそうだったけど」
「…どんな?」
最初のコメントを投稿しよう!