ゆめ、うつついろ

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  「ほら、実を付けない金木犀。あれに御世話を例えたのよ」 にやけていた柳さんの表情が突然無になり、顎を上げて小馬鹿にするように私を見下げた。 「貴様の色恋も実に成らんようだな」 「………」 「ちょっと柳、それは座敷童様に失礼よ」 …柳さんのそれは、どうやらわらしの真似らしい。 すると今度は眉間にきつく皺を寄せ、乱暴に腕を組んだ。 「黙ってろクソ餓鬼」 「ぶっは!!」 女郎さん達が笑い転げる。 私も吹き出すかと思った。 特に眉間の皺が、夏生に良く似ている。 「あの時の御世話様!見た?あのふてくされた顔ったら!」 「私も声上げて笑っちゃうかと思った!危うく謹慎食らうところだったわー」 「ちょっとあなた達、波瑠ちゃんの前でしょ。少しは気を遣いなさいよ」 「え?いや、別に…」 口を挟めずにいると菊さんが私の頭を胸に抱き抱えた。 柔らかな身体から仄かに甘い香りがする。 「御世話様は愛想もないし素直でもないけど、自分には正直な方よ」 「そ、そうなんですか?」 「御世話様の座敷童様への態度、粗雑でしょ?波瑠ちゃんの為に警戒を露わにしているとは思えない?」  
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