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「良い話?」
「うん。夏生のこととか」
「……」
…鋭すぎやしませんか。
ニコニコ顔の冬馬くんからは何の悪意も感じられない。
奥の部屋の扉を気にしながら冬馬くんに顔を寄せた。
「…今日、言おうと思ってて…」
「何を?」
「……」
「ごめん、冗談だよ。わかってる」
非難の目を向けてやろうかと思ったけど、きっと顔が赤いだろうから出来なかった。
せっかく夏生の前でも気を張って真顔を保っていたのに。
「頑張ってね。良い報告を期待しているから」
「う、うん」
「じゃあ邪魔者は風呂にでも行ってくるよ」
立ち上がろうとする冬馬くんにぎょっとして、必死で縋りつく。
「ま、待って…!そういう気遣いいらないから…!自分のタイミングでいくから大丈夫!」
「波瑠が計るタイミングなんて無駄なものだよ。結局言えないままズルズルいきそうだけど」
「…それ、女郎さん達にも同じ事言われた…」
恋愛初心者なんだからしょうがないじゃん、と唇を尖らせていると奥の部屋へ繋がる扉が開いて夏生が顔を出した。
私はわかりやすく息を呑んで固まってしまう。
「兄貴、風呂の準備出来たけど」
「ありがとう、行くよ」
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