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「自分の方がわらしと合う…なんて、俺を廓から追い出す為の嘘だと思ってた」
「うん…。実際、冬馬くんとわらしは仲が良いように見えるよ」
「……」
「あ、あの、仲が良いっていうか、冬馬くんもわらしの存在を否定しないで尊重してるっていうか…」
「………」
…しまった。
私の発言のせいで夏生がどんどん落ち込んできた…ように見える。
「…冬馬がわらしに同調して、完全に取り込まれる夢ばかり見るんだ」
「ちょっとやだ…取り込まれるって、何それ…」
何を言ってるんだろう、と思ったけど、何故か一瞬だけわらしと冬馬くんの存在が重なって見えた気がして背筋がゾクリと痺れた。
「冬馬はわらしを甘やかし過ぎる。『外』の物を見せてやれだなんて、どうかしてる」
「そ、それはわらしが可哀想だから」
自分が感じた恐怖を誤魔化したくて言ったのに、夏生には私が夏生を否定したように聞こえたらしい。
じろりと私を睨み、肩を強張らせるのを見ると呆れたように小さく息を吐いた。
「相変わらずお前は冬馬にベタ惚れだな」
「はっ?」
「まあ、わかってた事だけど」
夏生は面倒臭そうに伸びをすると、頭の後ろで手を組んでソファーに背を預けた。
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