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「……」
…これは、確実に誤解されている。
小等部の頃の話だって、何度も言っているのに。
こんな時は慌てて釈明しようとしても無駄だ。
…それより効果的な言葉を、私は今日、夏生に言うのだ。
夏生を横目で窺った。
つまらなさそうな横顔は、やっぱり冬馬くんに対しての嫉妬だろうか。
そう思うだけで鼓動が痛いほど高鳴り、喉を圧迫させる。
言いたい。
気持ちを伝えたい。
菊さんの言葉の通りだ。
次々と溢れてくる想いは止められそうにない。
これが、タイミングってやつなんだろう。
夏生がゆっくりと私を見た。
…びっくりするかな。
どんな顔をして、なんて言うんだろう。
「…なっちゃん」
今日、何日だっけ。
きっと大切な記念日になるから、後でカレンダーをチェックしなきゃ。
「私…も、なっちゃんが」
制服のスカートをギュッと握り締める。
狭い喉に鞭打って、掠れる声を絞り出した。
「……すき」
決して滑らかとは言えない私の告白に、夏生の目が大きく見開かれる。
夏生のそんな顔も好きだ。
握った掌と共に心が震える。
唇を引き結び、ありったけの気持ちを込めて夏生の瞳を見つめ返した。
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