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「……」
「……」
美緒、冬馬くん、廓の皆さん。
私、ついに言ったよ。
夏生は同じ態勢のまま私を見ていた。
妙な達成感と高揚感に酔いしれそうになる。
見つめ合う二人の間に流れる空気もどこか甘さを孕んで……
……いない。
…あれ?
見開かれたていた夏生の目が徐々に細められていく。
それは心を許した相手への、ましてや好きな子に対する仕草なんかじゃなく、警戒心を露わに軽蔑するような眼差しだった。
「えっ?」
想像もつかない反応に思わず間抜けな声を漏らしてしまう。
夏生はいよいよ眉間に皺を寄せ、険しい顔で私を睨み付けた。
「え、じゃねえよ。お前、俺を馬鹿にしてんのか」
「え?」
「どうせ冬馬に何か吹き込まれたんだろ」
…吹き込まれたんじゃなくて、背中を押してもらったんだけど。
だけど夏生の怒気に押されてその微妙なニュアンスの違いを指摘出来ない。
口を閉ざす私を見て、夏生は盛大に溜め息を吐いた。
「あのな。お前は単純過ぎるんだよ。惚れた相手だからって冬馬に良いように使われやがって」
どうして夏生がこんなに怒っているのか理解出来ず、ぽかんと口を開けていると夏生が心底嫌気が差したような表情で頬杖をつく。
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