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私は何も悪いことしてないのに、鋭利な刃物となった言葉は私の心をぐさりといとも簡単に貫いた。
夏生は私に弁解すらさせてくれる気がないらしい。
事態は掴めた。
だけどこんなの、あんまりだ。
涙が込み上げてきそうになるのを、下唇を噛んで堪える。
静まり返った薄暗い廊下にぶら下がる提灯達が、悲惨な私の心を嘲笑って揺れているように思えた。
「…いや、俺も悪かったんだ」
聞こえた声は優しさではなく、諦めを色濃く示している。
「今まで通りで良いだなんて言ったからだな。やっぱりそんなの無理だわ」
「…え」
「これからはなるべく会わないようにする。お前も俺に近付くな。例えさっきのが本気だって何度言われても、俺とお前が付き合うとか有り得ないし」
パタン。
私を拒絶する残酷な音が廊下に反響し、いつまでも耳に残る。
足は床に縫い止められたように動けない。
天国から地獄。
夏生から受け取ったはずの恋の種は自分の中ですくすく育ったけれど、土の外へ出た瞬間に捻り潰された。
波瑠、十七歳。
私を好きだと言ってくれた人に、何故だかこっぴどく振られる。
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