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わらしはススキを手に取ると、穂をしごいてゆらゆらと揺らした。
風も無いのに種が部屋中に舞い上がり、オレンジ色に煌めきながらふわふわと畳の上に落ちる。
女郎さん達がそれをうっとりと見上げながら小さく息を吐く。
さぞかし幻想的な美しい光景なんだろう。
「…散らかるでしょ」
私はといえば、完全にやさぐれているからこんな可愛くないことしか言えない。
あれから数日が経った。
夏生は宣言通り、私と必要以上に関わらなく…いや、近寄らなくなった。
今だって奉納物を選び終えると「ご苦労さん」とだけ言い残し、座敷を出てしまっている。
何度か部屋まで追ってはみたが、私が部屋に入ると同時に座敷に戻ってしまうのだ。
子供のような明らかな拒絶に、悲しみを通り越して苛立ちばかりが募っていく。
「…女」
「波瑠だって言ってんの。そろそろ名前覚えてよ、もう」
そうして今日も無関係なわらしに八つ当たりをするという、何とも情けないループに陥ってしまっている。
これが今の状況だ。
「どうせくだらないとか思ってるんでしょ」
先を見越して言ったつもりだけど、わらしは猫にやるようにススキを撫でた。
「…人間が何かに必死になる事は可笑しな事では無い」
「え」
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