色は匂へど散りぬるを

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  「今日もめでたく両想いだったわね。おめでとう」 「梅。からかわないの。深刻なんだから」 藤さんがたしなめると梅さんが肩を竦めて笑った。 両想い。 …そのはずだけど。 それを知らないのは当事者の夏生、ただ一人だという珍事。 これには皆、唖然とした。 「でも面白い程こじれてるわねぇ。何をどうしたらそこまで疑えるのかしら」 「波瑠ちゃんって意外と信用されてなかったのね」 「好きって言い方も可愛くないしねぇ」 「うぅっ…」 お姉様方にズバズバと遠慮無く言われて私はもう瀕死寸前だ。 「後は押しまくるしかないんじゃない?ここで引いたら告白が水の泡よ」 「まぁ、めでたく付き合えても御世話様にとっては苦行の日々の始まりだけど」 「…苦行ってなんですか?」 「んー、今は波瑠ちゃんが気にしなくてもいいこと」 意味ありげに頭を撫でられ、思わず溜め息が漏れる。 私のこの状態も苦行ですけど。 「いっそのこと、押し倒しちゃえば?」 「……なるほど」 女郎さん達が面白半分にくれるアドバイスすら脳内の片隅に置いてしまう私は、とことん恋愛偏差値が低いようだ。  
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