色は匂へど散りぬるを

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  冬馬くんが座敷に入ると夏生が諦めたように溜め息を吐いた。 「…わらしの出迎えは俺の仕事だから行くよ。波瑠もいつも通り奉納物を頼む」 「……わかった」 別に夏生は私に話がある訳じゃないらしい。 やっぱり。 わかってたけど。 冬馬くんがあんなに怒ってた理由だって、どうせ言うつもりも無いんだろう。 そう思ってたから、夏生の次の言葉には驚いた。 「…奉納物下げたらこの部屋で待ってて」 「え」 「……ちょっと話そう」 『――もうお前なんか好きでも何でもない。これで満足か』 夏生に絶対零度の瞳をもってそう突き放されたのはほんの一時間前。 だから、心の折れかけた私には悪い内容しか思い浮かばなかった。 ちゃんと話をしたいと願っていたはずなのに足がすくむ。 逃げ出したいとさえ思った。 …でも、ちゃんと向き合って話せるのなら。 最後のつもりでもう一度、真剣に気持ちを伝えようと思った。 気もそぞろの状態でわらしの前に座る私の視界に、次々と折り鶴が転がってくる。 くちばしの先まで綺麗に折られていて、わらしの意外な器用さに驚く。 …わらしにも昔は好きな子とかいたのかな、なんてぼんやりと考えたりした。  
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