色は匂へど散りぬるを

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  「お前が俺を好きなはず無いから」 「だからなんで」 「…お前に優しくしてやったこと無いし…お前の好きな冬馬とは真逆だろうし。全部、自覚してるんだよ」 眉間に力が入って、はあ、と重い溜め息が出た。 「意気地無し」 「…はぁ?」 夏生が鋭い視線を私に向ける。 やっと目が合った。 だけど、可愛いことは言えそうにない。 「言うだけ言って逃げるなんて、カッコ悪。それでも大人なの。自覚とか言ってるけど、完全に的外れだし」 「ああ、そうかよ。カッコ悪いと思ってんなら、これに懲りてもうふざけたこと言うのやめろよな」 「でも好きだもん」 「…………あのな」 夏生は苛立ちを露わに自分の髪をわしわしと掻いていたけど、何か思い付いたようにその手をピタリと止める。 次の瞬間、突然立ち上がったかと思えばソファーを迂回して夏生の定位置である私の隣に乱暴に座った。 ソファーが沈んで夏生の方に身体が傾くのを、手を付いて耐える。 耐えたはずなのに、目の前に夏生の顔があった。 「……!」 吐息の掠める距離に心臓が飛び跳ね、息を詰めて目を見開く。 夏生はさっきとはまるで別人のように、無表情に細めた目を私から逸らさない。  
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