色は匂へど散りぬるを

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  不自然にならないようにそっと身体を離したのに、夏生はソファーに手を掛けて離れた距離をさらに詰めてきた。 「…な、なに…?」 「…何だと思う?」 「……」 ギシリ、とソファーが軋んでお互いの鼻が触れ合う。 私の目を射抜くように見ながら、尚も近付こうとする夏生に困惑した。 身体が緊張で強張る。 …けど、動いたらそこで負ける気がして、必死で夏生の目を見返した。 「…俺と、こーゆーこと出来るの?」 至極近い距離で発せられた声が私の唇を振るわせるから、ついに触れたのかと思った。 …夏生は私を試している。 「……できるよ」 私の言葉に、夏生の目に怒りが滲む。 だから、私も怒るんだ。 夏生の両肩を掴むと力任せに押し返した。 意外にも夏生の身体は簡単に後ろに傾いた。 少し離れた方が、夏生の表情が良く見える。 驚いたように目を見張るのは、私の行動が想定外だからだろう。 ソファーに完全に背をつけさせると、その上にのし掛かった。 『いっそのこと、押し倒しちゃえば?』 そう助言してくれたのはどの女郎さんだったか。 まさかそれを実現するなんて思わなかった。 自分の今の態勢がどれだけ恥ずかしいのかは、考えないようにした。  
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