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「私をしばらくここに置いてください」
「………それは勿論構わんが…」
「ありがとうございます」
驚いたように私を見る直純さんに迎えられ、大荷物を持って和室に入った。
荷解きをしていると当然のように直純さんから心配そうな視線が向けられる。
「…何があった」
「ううん、終わったところです。もう何もありません」
「……」
ジッと見るだけでもう何も聞いてこない直純さんに笑顔を作ってみせる。
そうだ、全部終わったのだ。
何も思い悩むことはない。
色恋なんて不確かなものに振り回されて、馬鹿みたい。
夏生とのことなんて無かったことにして、今まで通り勉強と仕事を頑張っていれば良いんだ。
直純さんのところに身を寄せていれば、仕事以外で夏生と会うことも無いだろう。
後はなるべく夏生に会わない努力をした。
女郎さん達と一緒に行動して、一人では廓に行かなくなった。
奉納物の準備が遅れがちになったけど、手を貸してくれる女郎さん達のおかげで何とかなっている。
夏生が私を呼び止めそうな気配を感じると、早々に逃げた。
ああ、なんだ。
こんな簡単に「俺に近付くな」って夏生の言葉通りにできるもんなんだ。
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