色は匂へど散りぬるを

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  私は完全に気を抜いていた。 いや、一緒に遊ぶうちに厚かましくも手懐けたような気分になり、わらしを舐めきっていたんだ。 …わらしの考えている事なんて、わかるはず無いのに。 二人だけの座敷に、ごとり、と鈍い音が響く。 どうやら私は畳に後頭部を打ち付けたらしい。 私を見下ろすわらしの背後には行灯に照らされた天井があった。 なんでこんな体勢になってるんだっけ。 思い返そうとしても頭がもやがかっているようでよくわからない。 起きなきゃ、と思ったけど、わらしの無機質な目を見ていると身体が金縛りに遭ったように動かなくなる。 「世話には散々忠告をした」 驚いた。 口元に笑みを浮かべているのに、笑っているようには見えない。 言葉の意味を聞き返そうとしても、口から空気が漏れていくだけで何故か声が出ない。 唇さえ、動かせないのだ。 「恨むべきは、愚かにも俺の懐に踏み込んだ己自身だと思え」 冬馬くんの長い前髪が私の頬に滑り落ちた。 目を見開いたつもりだけど、瞼が動いたかどうかはわからない。 行灯に照らされていたわらしの顔が陰る。 私の影が映ったのだと知った瞬間、わらしに唇を塞がれていた。  
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