色は匂へど散りぬるを

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  …… …え!? 夢かと思った。 夢であってほしいと願う。 でも、唇から伝わる自分より低い体温が私の望みを打ち砕く。 ――現実なのだと、実感せざるを得ない。 ……ちょっと…! なに…! なによコレ…! 非難する言葉も発せられない私の唇を、ひんやりとした唇が深く啄む。 一度唇を離したわらしと間近で目が合った。 信じられない気持ちでその目を見つめると、今し方私に触れていた唇が妖艶に弧を描く。 そのまま再び近付いて、濡れた唇をべろりと舐められた。 「……!」 「女を食う、とは面白い表現だと思わんか」 わらしの声が肌をピリピリとくすぐる。 わらしは私の顎を掴むといとも簡単に横へ向かせた。 かと思えば、無防備になった首筋に、がり、と歯を立てられる。 「……っ!」 痛みと驚きに身体を強張らせることも出来ない私は、息を呑むしかなかった。 「こうしていると、本当に食っているような気分になる」 噛まれた所を舐め上げられ、初めての感覚に身体が警告を発するかのようにぞわぞわと総毛立った。 ヤバい。 どうしよう。 誰か…。 唯一動く目を凝らして部屋中を探るけど、座敷に必ず控えているはずの女郎さんの姿がない。  
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