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『学校終わったらすぐ廓来て』
夏生からのメールに頬を染めて廓に向かっていた時が、一番幸せだったと思う。
「え…?」
薄暗い鳥居の下で言われた言葉の意味が良くわからなかった。
ただ夏生の顔が青ざめていて、その意味を理解せざるを得ない。
――冬馬が起きない。
小さな声でもう一度同じ台詞を言われて、やっと身体を動かした。
冬馬くんは座敷にいた。
布団が掛けられている肩に触れると僅かに呼吸を感じる。
ただその目はかちりと閉ざされ顔色は青白く、…まるで死人のように見えた。
「…!と、冬馬くん!ねえ!」
身体を揺すってみるが、冬馬くんが起きる気配は無い。
小さく開いた口からは僅かに空気が出入りするだけだ。
「…いつから?何があったの…?」
「ずっとこうだ。…いつもは昼くらいに起こせば起きるんだけど、今日は何かおかしい」
行灯に照らされた柱時計を見ると、十六時を示していた。
「…おじさん達には?」
「…まだ言ってない。もしかしたら疲れてるだけで、もう少ししたら起きるかもしれない」
「……」
その言葉は自分に言い聞かせているかのように聞こえた。
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