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知るか、と言い掛けたわらしが私を見て、何か思い出したように「あぁ」と言った。
その目で昨日襲われたことが蘇り、不自然に視線を逸らす。
「そうだったな、贄は無謀にも俺に逆らったのだ。暫く動けずにいるのも仕方あるまい」
「逆らう…?」
「腕一本とはいえ、この俺を押し退けて表に出たのだ。あの様な事態は初めてだな。くく。当代は随分物分かりの良い贄だと思っていたが、まさか俺に逆らうとは」
「……」
喉を鳴らして笑うわらしを呆然と見た。
…あの時、腕を振り上げて膳をひっくり返したのは冬馬くん?
そうだ、冬馬くんが私を助けてくれたんだ…!
「逆らったら、どうなるの…!?いつ起きるの!」
「さあな。大人しく待つことだ。俺が中にいる限り、例え骨皮になろうと死ぬことは無い。…まぁ、このまま正体が戻らんかもしれんが」
「えっ…!?」
「首でも落ちん限り死なん。安心しろ」
「や、やめてよ…!縁起でもないこと言わないで!」
酷い言葉にカッとなって腰を浮かせようとすると夏生の手によって止められた。
夏生はわらしに鋭い目を向けているが、文句を言うつもりはないらしい。
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