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「…冬馬は眠っているだけなんだな?」
「そうだ」
「わかった」
夏生は私の手を引いて立ち上がると女郎さんを呼んで奉納物を運び入れさせ、藤さんと菊さんに「いつも通り頼む」と告げてから私を連れて座敷を出た。
「下に報告に行く」
緊張を孕んだ低い声。
繋ぎっぱなしの手を握り直すと、夏生は私を安心させるかのように手の甲を指の腹で撫でた。
「冬馬が…!?」
おばさんの悲鳴のような声が事務所に響く。
おじさんは顔を強張らせつつも、一言一句聞き漏らさまいと夏生を見ていた。
夏生は表情変えずに事務所にいたおじさんとおばさんに淡々と状況を説明をする。
最近のわらしの様子。
わらしが言う、冬馬くんの様子。
そして昨日、私が襲われかけたことも。
息を呑むおじさんの隣で青ざめながら口を手で覆っていたおばさんが叫び声を上げた。
「夏生…!あ、あなたがついていながら、どういう事なの!」
「…ごめん」
「冬馬はどうなるの!?戻ってくるのよね…!?」
「……」
「止さないか!先ずは波瑠ちゃんに謝罪をしなければ」
「わ、私の事なんて、別に…」
息を潜めて場を見守っていたけど、突然名前を呼ばれてしどろもどろになりながらおばさんを見る。
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