死屍累累

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  顔を見上げると夏生は困ったように小さく笑う。 「思ってること、顔に出すぎ」 「……」 「…ちょっと話す?」 「うん…」 私達は廓に入ると長い廊下に背を向け、鳥居の下に腰を下ろした。 スペースは広いのにくっついて座る私に夏生が声を出して笑う。 奉納物はもう選び終わったんだろうか。 廊下の奥からは微かに三味線の音が聞こえる。 「…おばさん、なっちゃんにいつも…その…あんな感じなの?」 私が知るおばさんと夏生はいつも軽口を叩き合っていた気がする。 …と言っても中等部の頃の話だけど。 廓に入った今は、関係が変わってしまったんだろうか。 でも今だって廓に向かう私に冬馬くんと夏生の様子を心配そうに聞いてきたりするんだから、おばさんがあんな事を言うなんて信じられない。 そんな思いで夏生の横顔を見つめていると、夏生は特に迷うことなく口を開く。 「いや、そんなことないよ。廓に入ってからはお袋とあまり話さないし。でもあそこまで取り乱したのを見るのは俺が村へ戻って来た日以来…いや、閻魔詣の時もか」 「…なんで平然としていられるの?」 「そう思われてるって知ってたから」 「……」  
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