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確かあの時は冬馬くんも小等部で。
先生に怒られている夏生に駆け寄って「僕がやったんです」と言いながら頭を深々と下げていた。
てっきり夏生を庇って名乗り出たのかと思っていたけど。
「それ、周りの大人にも言われた。冬馬は自分がどう評価されてるかわかってるからな。あいつ、そこまで計算する腹黒なんだよ。…ああ、他にも色々思い出したら腹立ってきた。起きたら真っ先に文句言ってやる」
「ふふ。まずは御役目交代の話をするんじゃないの?」
「いや、文句から言わないと気が済まない。早く起きねーかな」
まるで冬馬くんが明日にでも起きそうな言い方に、私の不安も徐々に綻んでくる。
夏生はそんな私の後頭部を掴み、自分の胸に押し付けた。
「ちゃんと文句言うよ。これからはなるべく言うようにする」
「…え」
顔を上げようとするけど、後頭部に添えられた手がそれを阻む。
…それって、もしかして。
「…これからは我慢しないってこと?」
「そうしないと加江さんに怒られるんだろ?もうあんな拳骨されるのは御免だしな」
「……」
「何だよ」
「……何でもない」
嬉しくて緩む顔を隠すように夏生のTシャツを握り締めた。
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