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…酷いことを言ったおばさんだけど、やっぱり本当は夏生の事を想っているんだ。
あの時は混乱してただけなんだ、きっと。
「なっちゃんは大丈夫だよ!私がついてるから!」
嬉しくて興奮気味に言葉を返した。
早く廓に戻って夏生に教えてあげたい。
おばさんが心配してたよって、伝えてあげたい。
「待って」
気がはやって駆け出そうとした私をおばさんが止める。
おばさんは笑っていた。
「この間二人が事務所から出ていく時に見えたんだけど…波瑠ちゃん、夏生と手を繋いでた?」
「手?」
…そういえばあの時も手を繋いで廓に戻ったっけ。
あの日以来、私と夏生は不安を紛らわす為に手を繋いで過ごす事が多くなっていた。
だから深く考えずに頷いた。
「あら。じゃあ、もしかしてふたりは…」
「あ…」
…そういうことか。
あれを見たらそういう結論に至るよね。
顔に熱が溜まっていく私を見ているはずなのに、おばさんは私の口から言わせたいようで口角を上げながら小さく首を傾げる。
…隠すことでもないよね。
それに、おばさんは確信を持って聞いているようだし。
照れ臭さを噛み殺しながらおばさんの目を見てしっかりと頷いた。
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