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「…冬馬が御役目になった以上、夏生が『鳳来』を継ぐのよ。…先も見ずに結婚だなんて軽々しく言わないで。波瑠ちゃんには私のような思いはして欲しくないの」
夏生はこれから冬馬くんに代わって御役目様になるんだよ。
そう言いたい気持ちを抑え、今はおばさんの言葉に耳を傾ける。
「『鳳来』には代々男の子しか産まれないって知ってた?それも、二人って決まっているの。どう抗ってもそれは覆らないのよ」
「あ…」
そういえば夏生達もおじさん達も二人兄弟だと今更ながらに思う。
まさか歴代の子供達が皆一様に二人兄弟だったなんて。
…これもわらしの力なんだろうか。
「家を継ぐ長男と御役目を継ぐ次男。その二人を産む事が『鳳来』の嫁の務め」
「……」
「犠牲にされるとわかっていて、夏生を産んだの。…産むしかなかったのよ」
おばさんは苦しそうだった。
襟を握り締め、胸が裂けてしまうのを耐えているように見える。
おばさんはきっと、何度も運命に抗おうとしたのかもしれない。
「自分の産んだ子が勝手に生活の礎にされるのよ…!それがどれだけ辛いか…娘のようなあなたにそんな思いをさせたくないの!夏生と冬馬の分まで幸せになって欲しいのよ…!」
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