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「でもあれは仕方がないよ」
「そうよね、夏生の日頃の行いが悪かったもの」
顔を見合わせるとおばさんと悪戯っぽく笑う。
でもその少女のような顔はすぐ曇ってしまった。
「…ちゃんとした母親なら、今からでも疑った事を夏生に謝るんでしょうね」
「…駄目なの?」
「私はもう、夏生を突き放さなくちゃいけないから」
「どうして」
私の責めるような口調におばさんは俯いた。
「…今更冬馬の代わりに可愛がるだなんて、無理よ。冬馬に申し訳ないし、それは夏生にとっても残酷過ぎる」
「冬馬くんの代わりじゃなくて、夏生として愛することは出来るでしょ?」
「……」
「なっちゃん、おばさんにどう思われてるかわかってるって言ってた」
おばさんが息を呑んで瞳を揺らす。
…ああ。
ここにも我慢してる人がいる。
「おかしいよ、こんなの。…家族なのに、大切なことも伝え合わないなんて」
「……そうね。波瑠ちゃんの言うとおりだわ」
「…おばさん。なっちゃんは冬馬くんが起きたら御役目様を代わるつもりだよ」
アーモンド型の大きな目が、更に縦に伸びた。
もしかしたらおばさんは今、夏生への言葉や態度をとても後悔しているのかもしれない。
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