生きる

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  ブサイクな顔、とか言われると思って言い返す準備をしていたのに、意に反して黙り込まれると反応に困る。 夏生は文句でも言い出しそうな顔で私を見ると、「おやすみ」とだけ言い残して座敷へ戻っていった。 「……」 あの日のキスは何だったんだ、と思えるほど、夏生は私に触れなくなった。 近付いてもさり気なく距離をとられるし、手を繋いでもやんわりと離されるし。 嫌われてはいないと思う。 夏生の目は優しいし、こうして出入口まで送ってくれるし。 ただそんな雰囲気になりそうになると、不自然なくらい見えないバリアをめぐらすのだ。 夏生がひとりで、勝手に。 「…そのうち美緒先生に聞いてみようかな」 私はこの時の夏生の決意を知らないまま、のんきにそんな事を考えていた。 冬馬くんが目を覚ましたのは、これから二日後。 眠りについてから十一日目の、十月半ばの肌寒い日だった。  
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