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コトコトと鍋の蓋が揺れる音を聞きながら焼いた茄子の皮を丁寧に剥く。
わらしは私の出したものを綺麗に平らげる。
どうせ食べるならバランス良く栄養を摂ってもらいたい、とおにぎり以外のものも用意しているんだけど、おじさん達には完全に内緒にしているから料理は夏生達のキッチンを借りて作っている。
わらしはどんな料理にも文句を言わないけど、煮物の味見をしながら、おばあちゃんにもっと料理を習っておくんだった、と今更ながら後悔した。
「波瑠。冬馬頼んでいい?」
「うん、いいよ」
お風呂へ行く夏生に代わり、座敷で眠る冬馬くんの隣に座る。
廓の気温は一定のはずなのに何故かひんやりとした空気を感じるのは、冬馬くんの口から漏れる微かな息遣いのせいだろうか。
伸びた前髪が横に流れ、痩せて薄くなった瞼が露わになっている。
「…冬馬くん」
話したいことが沢山あるんだ。
お礼だって言いたいのに、起きてくれなきゃ何も出来ないよ。
皆心配してるから、そろそろ起きてよ。
祈りを込めながら顔を見つめていた時、その瞼がぴくりと震えた気がして慌てて手を取る。
「…!冬馬くん!?冬馬くん!」
握った手に力を込めて呼び掛けると、今度は指先が僅かに動いた。
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