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お風呂場まで猛ダッシュして脱衣所のドアを開けるとお風呂上がりの夏生が飛び跳ねた。
腰にタオルを巻き付けながら顔を真っ赤にして怒っていたけど、それどころではない。
冬馬くんの事を伝えると、今度は夏生が血相を変えて脱衣所を勢い良く飛び出した。
残念なことに冬馬くんは呼び掛けても揺すっても起きなかったけど、一度目を開けたという事実が私達のテンションを上げさせる。
久し振りに手を取り合って喜んだ。
「…なんだこれは」
わらしの視線は山のように盛られた膳の中身ではなく、横に添えられたカラフルな小袋に向けられていることはわかっていた。
ロングセラーの子供向けチョコレート菓子。
ちなみに桜さんの好物だ。
袋を破ってお皿に出してあげると、わらしはそれを摘んでしげしげと眺める。
「冬馬くんが起きたから、御祝い。本当はケーキとか用意出来たら良かったんだけど、時間もなかったから女郎さんの控え室から貰ってきた」
「……この妙な絵は」
「コアラ」
「……」
コアラを知らないのか現代の技術に驚いているのかはわからないけど、わらしは眉を寄せながら一つ一つ違うコアラの絵のついたお菓子を見ていた。
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