生きる

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  『起きて、話せた。もう大丈夫そう』 夏生からそうメールが来たのは翌日の昼休み。 今すぐ跳んで帰りたい気持ちを抑え、なんとか授業を乗り切った。 「何よ、そわそわして。さてはこれから男と会うんでしょ」 茶化すような美緒の言葉にも適当に相槌を打ちながら帰り支度を急ぐ。 こんな日に限って日直なのだ。 日誌を書く横で美緒が暇そうにしているのが腹立たしい。 「男っていうか。うん、まあ男か」 「認めた!何、まさか告ってきた男と付き合いだしたの!?」 「あ、うん」 「…!いつからよ!聞いてない!どこまでいったの!?」 「つい最近だよ。落ち着いたら言おうと思ってたんだけど、私生活でバタバタしてて。それに進展もなにも…もー!喋ってたら間違えたじゃん!早く帰りたいのに!」 私の剣幕に圧された美緒が僅かに上体を逸らせ、つまらなさそうに唇を尖らす。 「…落ち着いたら話聞かせてもらうからね。あ、そうだ、コレあげる」 「何?」 思い出したように鞄から出されたものを見て、日誌を書く手がピタリと止まった。 「スクラッチ。先週街に行った時見掛けたから、お土産。ねえ、削ってみようよ。運試し!」 「……」  
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