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…うわ、きた。
コレは、確実にアレだろう。
そのスクラッチには『一等一千万円』と書かれてあってゾッとした。
「従兄弟が一万円当てた縁起の良い売り場から買ったんだから!もしかしたら五百円くらい当たるかもよ!ね、削ろ!」
「…か、帰ってからやるよ」
「なによもー、ノリ悪ーい。忙しいなら私が削ってあげる」
「ままま待って…!」
伸ばされる美緒の手から逃れ、スクラッチを慌てて鞄に仕舞い込む。
削られたりなんかしたら美緒が倒れちゃうかもしれない。
驚く美緒に「しばらく仏壇に供えてから削るのが私流」と伝えると大笑いされた。
職員室に日誌を出す時、美緒には悪いけど、スクラッチをシュレッダーにかけてなかったことにさせてもらった。
そして願わくばもう何も起こりませんようにと、シュレッダーに向けて手を合わせる。
顔を上げた時には、もう頭の中は冬馬くんに会うことで一杯だった。
「冬馬くん…!」
座敷ではなく、部屋に駆け込むのは何日振りだろう。
リビングへの扉を開けると、身体を起こしてソファーに座る冬馬くんが柔らかく笑う。
ソファーに座る冬馬くんを見るだけで嬉しくて泣いてしまいそうだ。
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