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「波瑠。…迷惑をかけたね」
「ううん…!もう起きてて大丈夫なの?」
「うん。…本当は寝てたいんだけど、寝てばっかりだと余計筋肉落ちるからって、夏生が」
夏生が、のタイミングで笑いながらキッチンに立つ夏生を指差す。
冬馬くんに夢中で存在に気付かなかった事を怒っているのか、夏生は目を細めてじとりと私を見た。
「た、ただいま」
「おかえり」
夏生はつまらなさそうに応えるとカップにコーヒーを注ぐ。
そんなやり取りを見て、冬馬くんが笑う。
…こんな普通のことが、とても幸せだと思った。
「…痩せちゃったね」
薄くなった冬馬くんの身体を見ながら言うと、冬馬くんも困ったように眉を下げる。
「本当にね。でも意外と平気だよ」
「コイツがわらしに結構な量の飯を食わせてたからな」
夏生は私の前にコーヒーを置くと隣に座った。
「え?座敷童様に…?どうやって?」
「寝てたくせに、今更文句なんか言うなよ。こっちだって色々考えた上で出した結論なんだから」
「……」
本当は夏生だって私の身を案じて反対していたのに、まるで自分も共犯のように冬馬くんに話す。
そんな夏生の優しさに胸が甘くときめいた。
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