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「…座敷童様にはもう直接取引をされないよう念を押してあったんだけどな」
「わらしが大人しく言いなりになるかよ。約束も守れないような妖怪だぞ」
「…そうだったね」
ぴり、と二人の空気が変わった気がした。
冬馬くんが真っ直ぐ私の目を見つめると、座ったばかりの夏生がそっと立ち上がる。
そのまま何も言わず奥の部屋に消えていった。
その背中を不安げに眺めていると、冬馬くんが私の名前を呼んだ。
「夏生とうまくいったんだってね」
「あ、うん…お陰様で…」
内容的に照れ臭いはずなのに笑えないのは、向き合う目が真剣だからだ。
冬馬くんは目を伏せると私に頭を下げた。
「…尚更、申し訳ない。ごめん。僕がもっと警戒していればあんな事には…」
「ええっ…!?ちょ、ちょっとやめてよ!冬馬くんは何も悪くないじゃん…!」
「でも…」
「いいの、ほんと!頭上げて!」
無理矢理身体を起こさせて顔を合わせたけど、冬馬くんの申し訳なさそうな目が痛々しい。
そんな顔を見てしまえば、冬馬くんに、いや、冬馬くんの身体を使ったわらしに身体を触られたことが事実なのだと思い知らされているようで、自分に言い聞かせる為にも必死で言葉を続けた。
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