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「ねぇ、その。…あの時、何があったかわかる？もしかして私、わらしを怒らせちゃうような事を言ったのかな…」
ずっと聞きたかったことを口にすると、冬馬くんが驚いたように目を見張る。
「…覚えてないの？」
「うん…。直前の記憶がないんだよね…」
冬馬くんは尖った顎に手を当て、何か考えるように俯いた。
「…その後、座敷童様はどう？」
「え？わらし？…普通だけど」
何を以て普通と呼ぶのかわからないけど、わらしは普通にお酒も飲むし、太夫と明け方まで過ごす。
これは今まで通りのはず。
いや、今まで通りに戻った、というべきか。
むしろ私と過ごしていたこの二週間が異常だったのだと、夏生も女郎さんも言っていた。
…それより、正直なところ、あの後から私は極力わらしに関わっていないから、わらしの様子なんかわからない。
話を聞いた冬馬くんは難しい顔をしたまま黙り込む。
それをハラハラしながら見守っていると、冬馬くんの口から小さく「ちづの」と声が漏れた。
「ちづの？」
「…座敷童様が一度だけ呟かれた名前だよ」
「え…」
「御本人も無意識のうちだったと思う。波瑠と遊びながら、波瑠を「ちづ乃」と呼んだんだ」
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