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考え込む私を見て、冬馬くんが柔らかく笑った。
「座敷童様は、人と関わるのが好きだよ」
「え」
それこそない。と瞬時に思う。
人間を小馬鹿にしてるし。
逆に関わることを煩わしく思ってそうだけど。
「知らない?座敷童って人間のことが好きな妖怪なんだけど」
「ええっ…!?」
「だから家に憑くんだよ。不思議だよね。座敷童の伝え話通りなら人間を怨んで当然の筈なのに、逆に執着するだなんて。その辺りの単純さはやはり子供だ」
「…伝え話?」
聞き返しても冬馬くんは曖昧に微笑むだけで、教えてくれるつもりはないらしい。
怨んで当然、ということは、…人間に酷いことをされてきたと言うことだろうか。
「僕は座敷童様には要望以上の環境を用意して差し上げたいと思ってる。見て、嗅いで、触れて。そうやって冷えたお心を揺すぶりたいんだ」
「なんでわらしにそこまで…」
「理由なら単純だよ。妖怪といえど、子供がこんなところに百三十年近く閉じ込められているんだ。出来る限りのことをしてあげたいと思わない?」
閉じ込められている、という言葉がいやにズシンと内臓に響く。
わらしは自分の意志でここにいるって言ってたけど、何が何でも離したくないのは『鳳来』なわけで。
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