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「座敷童様は『鳳来』の為にこれからもこうして生きていかれるんだ。僕は、波瑠にはまた座敷童様に関わって欲しいと思ってる」
冬馬くんの声は穏やかで優しくて、聞いているとなんだかこちらまで清らかになってくる気がする。
まるで伝導師に愛を説かれているような気持ちにさえなった。
「…とは言っても、さっき夏生が言った通り、座敷童様は時折約束を破られる」
「う、うん…」
「でも、もう大丈夫。僕が保証する」
冬馬くんが自信に満ちた目で私を見た。
力強い目に頷きかけた時、冷え冷えとした声が空気を切り裂く。
「いいわけあるか」
奥の扉が開いて至極不機嫌そうな顔をした夏生が戻ってきた。
話が聞こえていたのだろう、目を細めて冬馬くんを見下ろす。
…冬馬くんから小さな舌打ちが聞こえた気がするけど、気のせいだと思いたい。
「保証だなんて、良く言えたもんだな。今度何かあったらどうするんだよ」
「夏生は向き合う努力をしないからね。座敷童様の事を知れば少しはわかるよ」
「わらしの何を知れっつーんだよ。大体な、兄貴がわらしを甘やかすからどこまでもつけあがるんだよ」
「座敷童様の手綱取りをしようとしている時点でお前は駄目なんだ」
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