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「ちょ、ちょっと」
二人の間で繰り広げられるやり取りに堪えられなくなり口を挟む。
せっかく冬馬くんが起きたのに、いきなり喧嘩とかやめてほしい。
だけど二人の――というか夏生のエンジンはかかってしまったらしく、私を押し退けて冬馬くんの前に出た。
「波瑠をわらしに関わらせたいんなら今すぐ御贄を代われ」
「……」
このタイミングでそれ言うの…!?
ぎょっとして二人を交互に見ると、冬馬くんが呆れたように目を細めた。
「僕は波瑠に話を持ち掛けているんだけど」
「残念だったな。俺と波瑠の目指すものは同じなんだよ」
「へぇ。僕が眠っている間に波瑠を都合の良い方向へ丸め込んだか」
「何とでも言えよ。ついでに言えば親父達もこっち側についているからな」
「ふ、二人共、落ち着いて」
胃が痛い…!
止まることなくギスギス感を増していく空気に目眩すらしそうだ。
…もう冬馬くんに遠慮せずに言いたい事を言うと言っていたけど、その結果がコレなのか。
なんか方向を間違えている気がする。
冬馬くんがそんな夏生の気持ちを逆撫でするように薄く笑った。
「夏生はわかり易いな」
「何が」
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