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夏生が苛立ちを露に腕組みをするけど、次の冬馬くんの言葉で様子は一変する。
「もしまた次に座敷童様が波瑠に手を出そうとした時、僕の身体より自分の身体であって欲しいと思っているだろ」
「……は、あっ!?」
冬馬くんの言う通り、夏生がわかり易く狼狽えた。
一瞬だけ目が合ったかと思えば慌てて逸らされる。
「そんな状況でまで嫉妬心を剥き出しにするんじゃない。夏生と座敷童様が上手くいかない理由はそれだよ。お前が散々子供扱いする座敷童様より子供でいてどうするんだ」
「……、…な、なんっ…別に、俺は、…俺は兄貴と違って、事が起こる前にわらしを止めることが出来るから、だから」
「まず無理だね。座敷童様は夏生の言うことこそ聞かないよ。そうなれば波瑠を危険に晒すのは夏生自身だ」
まるで大人と子供の喧嘩だ。
言葉が詰まる夏生に対し、冬馬くんはすっかり冷静さを取り戻したようで、呆然とする私を見てニコリと笑った。
「…兄貴となら、何事も起きないって言うのかよ」
「保証を形で示せないのが残念だけどね」
「俺にはそれが信用出来ない」
「ではこうしよう。全部踏まえた上でどちらが御贄を務めるべきか、波瑠に決めてもらおうか」
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