生きる

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  「……はっ?」 突然向けられた視線と投げ掛けられた言葉に、私の口から素っ頓狂な声が出た。 …どうやらこのまま傍観者でいさせてくれるつもりはないらしい。 「わ、私が?」 困って視線をうろつかせると夏生が名案だと言わんばかりに胸を張る。 「そうだな。この際お前がビシッと言ってやれ、波瑠」 夏生の声は上機嫌だった。 当たり前のように、私が夏生の方が相応しいと言うと思っていたんだろう。 だから、口を閉ざした私に気付くと目を見開いてこちらを見る。 冬馬くんは私の心を見透かすように悠然と微笑んでいた。 「…おい、波瑠」 「…冬馬くんに、聞きたいんだけど」 「何なりと」 「…!オイ…!」 焦った夏生が私の前に立ちはだかって両肩を掴むけど、その横から顔を出して冬馬くんに質問を投げ掛けた。 「…わらしは今、少しでも生きる意味を感じてる?」 親しい人を作るでもなく、座敷から一歩も出ないで、同じ毎日を淡々と繰り返して。 わらしは日々何を考えているんだろう。 「…何言ってんだ。わらしなんかどう見ても何も考えてないだろ」 「そうだね。何も思ってらっしゃらない。今は全くね」  
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