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…歩き方、痛そう。
ヒビって、何か処置とかしなくて良いんだろうか。
肋骨はギプスとか出来ないんだっけ。
それでもちゃんとお医者様に診てもらった方がいいんじゃないのかな…
ハラハラしながら冬馬くんの背中を見送っていると、夏生がじろりと私を振り返る。
「お前には言いたいことが山ほどある。後で覚えてろよ」
「……」
心臓がキュッと縮こまった気がした。
わらしは箸の使い方がとても綺麗だ。
黙々と口に運ぶ様は男らしいけど、でもどこか仕草が上品で。
もしかしたら昔は良いところの坊ちゃんだったんじゃないのかな、なんて想像しながら眺めていた。
するとわらしの眉が不愉快そうに寄っていく。
「…煩い」
「え?何も言ってないよ?」
「贄だ。暫く静かに過ごせたかと思えば、正体を戻した途端これか」
どうやら冬馬くんがわらしに話し掛けているらしい。
「何の話をしてるの?」
「くだらん話だ」
「ふうん」
何となく微笑ましく思いながら食後のお茶を用意しようと急須に手を伸ばした時、その手を横から掴まれる。
「もういいだろ」
「……」
…まだお茶の準備が、なんて私に反論する余地はなく。
怒り心頭であろう夏生に座敷を引きずり出された。
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