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「話が違うだろ」
「…はい」
「お前はいつまで経っても冬馬信者だな。…わかってた事だけどさ、今回ばかりはむかつく。お陰で計画も丸潰れだ」
真横に並ぶようにして座っているからお互い顔を直視することはないけど、飲みかけのコーヒーを煽る夏生からはしっかりと苛立ちが伝わる。
というか、「むかつく」というストレートな言葉が鋭い矢のように私のハートを突き刺した。
「ごめん…。でも私、どうしてもわらしを…」
「そもそも飯を食う約束ってなんだよ。そんなの誰にだって出来るじゃねえか。それに、これからもわらしとの取引を続けていくとかぬかしてたな」
「だ、だって冬馬くん、あんなに細くなっちゃって…。何とかして太ってもらいたいなって」
「御贄から解放してやれば解決する話だろ」
「うぅ…」
夏生の正論に抗う術はない。
ご機嫌取りも言い訳も逆効果な気がして、とうとう口を噤んだ。
重苦しい雰囲気と夏生の溜め息でいたたまれなくなる。
ますます肩を落としていると、私の拳に夏生の掌が乗った。
かと思えばその手を引かれ、身体が傾き、私の左半身が夏生の右半身にぴたりと寄り添う形になった。
突然の接近に心臓が飛び跳ねる。
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