生きる

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  思えば。 魔の二年半があったにせよ、私は夏生の幼なじみであり親友であり妹的存在ではあったけど、…夏生の「そっち」側の事を全く知らない訳で。 彼女にどう接するのかとか、どんな目で見るのかとか。 どんな言葉を囁いて、どんな風に触れるのかとか。 想像すらしなかった私は、勝手に、夏生は何時如何なる場合もこのままで変わらないと思っていた。 いや、そうであって欲しいと。 私の知らない夏生なんて、無いはずだと。 私以外の誰かが、私の知らない夏生を知っているだなんて思いたくなかったから。 それは色恋なんかじゃなく、ただの幼い独占欲だったけど。 私の体温より高い唇が、一度離れかけたかと思えば角度を変えて再び押し当てられる。 私は目も閉じずに夏生をガン見していた。 視線に気付いたのか、夏生の目が薄く開く。 近過ぎてよく見えないけど、その目には今まで見たこともない程の熱を帯びているような気がした。 「…!」 夏生の目が再び閉じられたと思った瞬間、僅かに開いた唇からぬるりとした生暖かいものが口内に滑り込む。 一瞬、何をされているのかわからなくて目を見張った。  
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