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反射的に身体を離そうとしても、頬にあったはずの手がいつの間にか後頭部にガッチリと回っていて動けない。
苦しくて呻いたら何故か鼻にかかったような声になってしまい、それを聞いた夏生が舌をより深く侵入させた。
それが死ぬほど恥ずかしくて涙が滲む。
苦しくて恥ずかしくて、混乱する感情のままに夏生の胸を強く押すと唇がやっと離れた。
心臓が破れてしまいそうだ。
あと肺も。
それから身体中の血管も。
俯いてくらくらする頭を落ち着かせていると、そのまま腰を引き寄せられ、どういう原理なのか、私の身体は簡単に後ろに傾いていく。
ぎしりと音がして背中がソファーに埋まると、覆い被さる夏生と目が合った。
思わず息を呑む。
「…触っていい?」
「……」
触るって、なにを。
聞き返せずにいると、夏生は私の目を見つめたままそっと脇腹に手を置いた。
くすぐる時の急所。
普通なら色気のない場所だ。
なのに、指を這わされただけで身体に火が着いたように一瞬で熱くなった。
美緒に借りた雑誌の内容が頭の中を駆け巡る。
まさか、今日、今から、夏生と、ここで?
世の中のカップル達は、どんな顔をしてこんな恥ずかしい行為に耐えているんだろう。
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